Collab Interview

interviewer:真実 一郎 / 2026.April

●記憶に刷り込まれた「第一次怪獣ブーム世代」の原風景

1959年生まれということは、まさに「第一次怪獣ブーム」ど真ん中ですね。

本当にそうですね。小学校1年生の時に『ウルトラQ』と『ウルトラマン』が始まって、まさに怪獣と一緒に育った世代です。当時はマルサンのソフビやプラモデルを買ってもらっては、ボロボロになるまで遊び倒していました。

特に『ウルトラQ』のインパクトは凄まじくて、ガラモンやペギラは完全に記憶の中に刷り込まれています。図工の時間なんて、怪獣の絵しか描いていませんでした。

ソフビだけでなく、マルサンの怪獣プラモデルも作っていたんですね。

小学生になると「ソフビは小さい子が遊ぶもの」という感覚があって、僕はプラモデルに夢中でした。最初に買ってもらったのは『ウルトラQ』のトドラ。あの牙が好きでしたね。あとはエビラとか、『キャプテンウルトラ』のシュピーゲル号とか。たくさん持っていましたね。でも当時は遊び倒して壊しちゃうから、手元には何も残らなかった。

いつ頃まで怪獣で遊んでいたんですか?

リアルタイムでは『帰ってきたウルトラマン』までしか見ていないです。その後はアントニオ猪木対モハメド・アリとか、ブルース・リーとかで盛り上がっていたので、そっちの方に移行したんですね。

●ガレージキットから陶芸まで、幅広く怪獣を造形

一度は卒業された怪獣の世界に、再び戻ったきっかけを教えてください。

20歳を過ぎた頃、海洋堂がガレージキットを出し始めたんです。ホビージャパン誌上でそれを見て「凄い!」と衝撃を受けて。海洋堂の倉庫へ買いに行ったり、ビリケン商会のキットを買い漁ったりしていました。

初期のガレージキットって、組み立てるのが凄く難しかったですよね。

当時のガレージキットは今のようには整っていなくて、歯や爪の先端が気泡で欠けているのが当たり前の、ほぼ「素材」でした。それを自分で盛って直すのが楽しかったので、だから自分でも作りたくなったんです。ワンダーフェスティバルにディーラーとして初めて出たのは2000年、40歳の時でした。

誰かに造形を習ったわけではなく、いきなり原型が作れてしまったんですね。

スカルピーという粘土が自分に合っていたんでしょうね。ミレゴジやバラゴン、逆ゴジ、ガラモンを一気に作って持っていったら、飛ぶように売れたので、それで「あ、いけるかも」と気を良くしたんです(笑)。そこから10年くらいは、飲食業を続けながらガレージキットの怪獣造形を副業にしていました。

その後は飲食の仕事が忙しくなってしまって、原型制作から離れていました。本格的に復帰したのはコロナがきっかけですね。仕事の休みが多かったので、知り合いから原型を作って欲しいと頼まれて復帰しました。

陶芸で怪獣を作るという、非常にユニークな活動も行っていますよね。

原型制作を再開させた頃に、陶芸家の方と知り合って、怪獣を作りたいと言ったら後押ししてくれたんです。実際に作ってみたら、陶芸家の人も面白いねとか言ってくれて。それで本格的に作り始めました。

ガレージキットと陶芸では、作るときの感覚は違いますか?

粘土と土は違いますね。土は焼くと縮むし割れるし、空洞にしないと爆発する。だから壺を作るのと同じように、土を積み重ねて怪獣を作っていくんです。土はスカルピーと違って、作っているうちに自重で歪んだりするんですよ。それが面白くて、うまく取り入れたりしています。

●ENKA VINYLとの出会いと、脅威のアウトプット数

現在は「ENKA VINYL」のメイン造形師として大活躍をされていますが、どのような経緯で参加されたのでしょうか。

大阪の大丸百貨店の方を通じて、プロデューサーの吉水さんと出会ったのが3年ほど前です。「ソフビの原型をやりませんか」と声をかけていただいて。もともとマルサンやブルマァクのレトロソフビには憧れがありましたが、自分のリアルな作風とは縁がないと思っていたんです。でも、デザインを見せてもらったらすごく良くて。特に最初のキャラが自分の好きなデビルマンとかゴジラだったので、是非作りたいなと思って、二つ返事で引き受けました。

それにしても、制作スピードが尋常ではないと伺っています。

基本的に月2体以上のペースで作っています。過去に作ったガレージキットの原型がトータル60体くらいだったのに、ENKAではこの2年でもう70体以上作っています(笑)。来年には100体に到達するでしょうね。

そのペースだと、しんどくなったりしませんか?

ビオランテとかスペースゴジラとか、今までに無かったデザインのものが作れるので、やっていてすごく楽しいです。僕の好きな昭和のキャラクターがどんどん出てくるので。ダンテなんて一番好きなキャラだったんで、作ることが出来て嬉しかったですね。

基本的にフォルムと大まかなデザインはENKAさんなんですけど、細かいディテールは任されている感じです。

●モリシゲオが放つ新シリーズ「MSDコレクション」始動

この4月から、いよいよモリさんの名前を冠した新シリーズ『MSD(モリ シゲオ ディフォルメ)コレクション』が発売されます。第一弾となる『ゴジラ対ビオランテ』のゴジラは、前評判通りの凄まじい出来ですね。

2年ぐらい前に大丸の個展で陶器のゴジラを発表したんですが、そのイメージをソフビらしいフォルムに変えて作りました。通常のENKA VINYLのラインより、自分の色が強い造形になっています。

こだわったのは、体表のモールドですね。平成ゴジラと言えば、このゴツゴツ感なので。あと、陶器特有の下に垂れていく「ダレ」の感じを敢えて加えています。

マーブル成型による色合いも、肌のディテールが浮かび上がって迫力があります。

もともとソフビの人間ではないので、ディテールの情報量はどんどんリアル寄りに増やせるんです。ENKAさんにソフビ寄りのフォルムに制御してもらうことで情報量を消してもらって、足し算と引き算でちょうどいいバランスを探っています。

このゴジラを二重成形にすると、リアル系のガレージキットよりもリアルというか、艶めかしい感じが強調されるので、ある程度塗装で抑えて落ち着かせています。

大きな背ビレが別パーツではなく胴体と一体成型であることにも驚きました。

普通背ビレは別パーツですよね。一発で抜けるかどうかのギリギリまで大きくしてみました。この大きさの背ビレを一体で作っているところはないですよね。

次回作のキングギドラも、凄まじいディテールですね。

陶器のキングギドラをベースにしていますが、全身の鱗を1枚ずつヘラで盛り付けていきました。ざっと5〜6千枚はあったかな(笑)。時間は通常の5倍くらいかかりますが、この作業がとにかく楽しいんです。

今後はガラモンや、子供のころから好きなゴリラ系を、このシリーズで作ってみたいですね。

●ゴジラに助けられ、生涯現役を貫く

飲食業を引退され、いまや怪獣原型制作が本業になりました。

理想の生活ですね。昔、商売で苦しい時にある人から「将来、ゴジラが森さんを助けてくれる気がするから、作り続けなさい」と言われたことがあったんです。当時は半信半疑でしたが、本当にその通りになりました。いま、ゴジラに助けられています。

サラリーマンであれば65歳で定年退職ですし、老いると手先や目も衰えると思うのですが、モリさんのバイタリティは素晴らしいと思います。

自分は今が全盛期ですね。原型制作を一時期お休みしてまた戻ってきたから、フレッシュな状態で出来る感じなんですよ。もう本当に、まだまだこれからピークを迎えられるかな、くらいの気持ちです。

手先が動く限りは作り続けたいですね。うちの親父も祖父も死ぬまで現役でしたから、僕もまずは77歳までこのペースでやり抜くのが目標です。

今は1日最低でも7〜8時間は粘土に向かっていますが、知らないキャラクターに出会えるのも、自分の色が強いオリジナルを作れるのも、毎日が刺激的で仕方ありません。

モリシゲオ

1959年生まれ、愛知県出身。怪獣作家。1999年より怪獣ガレージキットの原型師として活動を開始。怪獣アート画や陶芸による怪獣造形など、幅広い手法で怪獣を制作。現在は「ENKA VINYL」のメイン原型師として活躍。

https://www.instagram.com/kaiju_brain/